医療維新記事全文「東朋香芝病院」保険医療機関指定取消関連

奈良県香芝市の東朋香芝病院(288床)が、看護師の夜勤時間の「72時間ルール」を満たしていないにも関わらず、入院基本料を不正請求していたことを主な理由として、6月20日にも保険医療機関の指定取消処分が出る見通しであることが分かった。6月17日の近畿地方社会保険医療協議会で決定、処分は今年10月l日からになる見込み。同時に、医師3人も保険医として戒告処分を受ける見通し。人口約38万人を抱える奈良県の中和医療圏で、年間約2200人の急患搬送の受け入れを続けてきた同病院の保険指定取消による地域への影響は大きいとみられる。

 「72時間ルール」に違反し、2007年10月から2009年11月までの間に、「不正Jとされたのは9百数十万円、他の部分については、数十万円が「不当」とされ、結局、監査により不正・不当とされたのは合計1000万円弱となる見込み。その他、監査の対象となった患者以外にも、カルテの自主点検による返還も求められることになる。

 同病院を経営する医療法人気象会は大阪府と奈良県で計3病院などを経営する。理事長の石出勲氏は全額返還する予定であり、診療報酬請求に問題があったことは認めたものの、「長年、奈良の2次救急などに貢献してきた自負がある。このような形で、挫折するのは納得がいかない」と憤りを隠ない。近畿厚生局の指導が入った2009年10月に先立つ2009年8月以降は、看護師が確保でき「72時間ルール」を満たせる状態になっている。それでも計15回実施された監査の過程で、保険指定取消が濃厚こなってきたことから・同法人は診療を継続するため、他の法人への譲渡も試みたが、奈良県が譲受法人の病院開設許可申請自体を受理しなかった。この法人は、既に2013年6月14日に、奈良県を被告として病院開設許可申請に関する拒否処分の取消しを求めて提訴している。
 さらに病院側の弁護士らは、処分基準のあいかさを指摘する。今後、同病院は保険指定取消の執行停止と、処分自体の取消を求める行政訴訟を提起する予定。近畿厚生局奈良事務所は、「公表前の個別案件については、一切コメントできない」としている。

15回に及んだ監査

 東朋香芝病院は、5市3町村から成る奈良県の中和医療圏における中核病院だ。大阪に通勤する住民も多い。中和医療圏の一般病床と療養病床の総数は、3394床(厚生労働省「2010年医療施設調査」だが、基準病床数は3435床で、病床不足地域。同病陳は現在、288床のうち一般入院基本料の対象病床は180床(一般病床180床、障害者施設等一般病床60床)。軟急車搬送人員の受け入れ人数は、年間約2200人で、新規入院も月間120人ほど受け入れている。また、脳外科関連の手術件数は、県内トップクラスを誇る。
 東朋香芝病院の指定取消は、2006年4月の診療報酬改定で、入院基本料が新設され、「看護師は月間の平均の夜勤時間が72時間を絶えてはいけないjとの施設基準、いわゆる「72時間ルール」が導入されたことに端を発する。この施設基準を満たし、7対1入院基本料を算定するため、多くの地域で看護師不足が発生したのは記憶に新しい。7対l入院基本料は当時、I日1555点だったが、「72時間ルール」が満たせない場合、特別入院基本料の575点という、約3分の1の点数しか請求(2009年度の診療報酬改定で、3カ月間に限って,7対1で1244点、10対1で1040点請求できるように引き上げ)。東朋香芝病院は、当初72時間を越えないように、夜勤看護師を3人から、2人に減らしたものの、2006年6月のある日、夜間に術後観察室内で、夜勤2人の看護師がある患者にかかりきりになっていたところ、同室内の別の患者が人工呼吸器の気管挿管を自分で抜去する重大インシデントが発生,幸い、即座に再挿管を行い、事無きを得た。
 現場から夜勤3人体制を求める声が上がり、患者の安全確保を最優先として夜勤3人体制を人員確保に先行して復活させることとし、他力で夜勤専従者の雇用やハローワークでの公募を通じて、看護師を募集したが、確保に至らなかった。結局、診療報酬の請求上、夜勤時間帯の勤務の一部を「日中」に振り替える形で、「72時間ルール」を満たせるようにし、一方で職員は実際の夜勤に見合った手当を支給していた。理事長の石田氏によると、「現場の看護師や事事務職の自主的な判断で請求が行われた。当時の理事長や院長は把握していなかった」として、当時の幹部の関与を否定している。
 内部告発を受けた近畿厚生局が、指導に入ったのは2009年10月。2012年12月から監査に切り替わり、2012年7月まで計15回にわたる監査が実施された。監査では、当初、「72時間ルール」に関する事実関係が調べられ、その後、無診察投薬や無診療リハビリも問題視された。

「重すぎる」処分と、「処分の際に考慮した」違反事実

 石田氏および病院側代理人弁護士らは今回の取消処分を疑問視する。第一は、指定取消に対する根拠が不明確であることだ。監査が終了した後、保険指定取消処分に先立ち、2012年9月、12月、2013年3月の計3回、聴聞が実施された。近畿厚生局は、聴聞に当たり、2007年10月から2009年11月までに、看護師の夜勤が72時間ルール」を守らずに診療報酬を不正請求した事実に加え、無診察リハビリや無診察投薬などを問題視していた。
 しかし、実際に「適用される処分基準に係る事実」として近畿厚生局が明示しているのは、「72時間ルール」に関する不正請求のみ。石田氏は「今回の処分は、72時間ルールの違反のみと聞いている。その他の違反事実における本処分の意味については、近畿厚生局の担当者は聴聞の際、その説明を二転三転させた上に、最終的に、処分基準に該当するとの判断はしていないが、「処分を行うか否かについて」「総合的に考慮した」旨を説明した(代理人弁護士の山田瞳氏)と言う。「処分基準に該当すると認定していない事実も考慮に入れて処分が決定される」状況について.代理人弁護士の山崎祥光氏は、「このような事実を処分の際に考慮する法令上の根拠がないことは厚生局側も認めており、処分の判断方法はおかしい」と問題視する。
 仮に「72時間ルール」以外が、指定取消に当たって考慮されなかったとしても、代理人弁護士の井上清成氏は、別問題を指摘する。「72時間ルール」の違反については、病院側が「当時の理事長や院長は知らなかった」と幹部の関与を否定する。さらに一時的には違反していても、その後は看護師が採用でき、「72時間ルール」が満たせるようになった由で、最も重い保険指定取消処分が下ることなる。病院側は、診療報酬返還の意向も示していて、井上氏は「<72時間ルールの違反のみで取消とするのは>東朋香芝病陳の地域医療に対する貢献を無視するものであり、法律的にも比例原則に反し、厳しすぎるのではないかjとする。石田氏も、管理が行き届かなかった点は認めつつ、処分重さに疑問を呈している。

行政処分の執行停止が認められるかが焦点

 当院では、地域医療への影響を抑えるために、監査中も前述のように「病院の譲渡」のほか、「違反金の返還」を模索してきた。早期の決着を目指した違反金の返還も、監査中認められなかった。保険指定の取消が決まった今、次の焦点は保険指定取消処分の執行停止が認められるかどうかだ。取消処分の執行停止が認められた例では、2005年11月に保険医療機関の取消処分を受けた、みぞべこどもクリニック(山梨県甲府市〉の例がある。同クリニックは2011年5月の東京高裁判決で、取消処分自体が取り消されている(『国が上告断念、「保険取消は違法」が確定』を参照)。

f0185713_19563512.jpg

[PR]
by jcpkasiba | 2013-06-22 13:24 | Comments(0)
香芝ほっとNews