自治労連「窓口業務の民間委託」についての見解


日本自治体労働組合総連合
中央執行委員会

窓口業務から「偽装請負・違法派遣」を一掃し、
住民の立場にたった「公共サービスの改革」を

― 窓口業務のうち民間委託が可能な業務範囲の拡大に関する見解と運動 ―

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はじめに
 福田内閣が昨年1224日に閣議決定した「公共サービス改革基本方針(改定)」に基づいて、内閣府と総務省等が本年117日に「市町村の出張所・連絡所等における官民競争入札又は民間競争入札等により民間事業者に委託することが可能な業務の範囲等について(以下、新基準)」をホームページに掲載しました。この新基準によると、住民基本台帳や印鑑登録、戸籍はもとより、国民健康保険や介護保険、障害者手帳交付、就学通知にいたるまで、市区町村のほとんどの窓口業務をそうたいとして、「事実上の行為又は補助的業務」と決め付け、民間委託が可能である、としました。

 しかし市区町村の窓口業務は、もっとも公務性、専門性、総合性が求められる業務です。職員には「全体の奉仕者」としての責務と高度な守秘義務が課されているからこそ、住民が安心して自らのプライバシー情報を明らかにし、申請や相談を行います。「なりすまし」による住民基本台帳の閲覧(身辺調査)等に対して、職員は経験や勘も駆使して規制し、住民の生命や財産を守っています。来訪した住民が何を求めているのか、何が必要なのかをじっくりと聞きだす中で、担当業務以外でも利用できるサービスを紹介し、権利の行使を手助けしています。

 ところで、新基準では、民間委託する場合、民間事業者が業務をおこなう官署内に市町村職員が常駐するなど適切な管理の確保、個人情報保護などを条件に挙げました。しかも自治労連等による「自治体職場から偽装請負・違法派遣をなくす取り組み」が生かされ、労働者派遣法の遵守も条件に加えました。民間委託が可能な業務範囲を一気に拡大させたものの、「適切な管理の確保(官署内、職員の常駐)」「労働派遣法の遵守」をしっかり守れば、事実上、民間委託できない状況を作り出しています。

 自治労連は、第1に、住民の立場にたった「公共サービスの改革」ではなく、財界・大企業の利益第一の「改革」しか眼中にない内閣府や総務省等の姿勢を厳しく糾すとともに、第2に、市区町村が安易に窓口業務の民間委託に走らないことを求め、第3に、現に民間委託しているところでは、新基準に照らしても不当不法なものなので、労働者派遣法等に基き窓口業務に従事している民間労働者を市区町村の直接雇用に切り替えさせる取り組みを攻勢的に展開するものです。

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1.内閣府と総務省等が示した「委託可能な業務範囲」
 新基準は次の3点に要約できます。特徴は「事実上の行為又は補助的業務」を理由に「民間委託可能業務」を大幅に拡大したところです。

1)公共サービス改革法(以下「市場化テスト法」)第34条に基づく「特定公共サービス」としての住民票発行等の窓口業務は、従来どおり、本人請求等の「受付」と当該請求にかかる証明書等の「引渡し」に限定されている。

2)窓口業務のうち「事実上の行為又は補助的業務」は、民間事業者による取扱いが可能である。ただし留意事項がある。
*委託可能な窓口業務
1)
住民異動届の受付・記載・転出証明書の作成等(端末による入力操作を含む、以下同じ) 2)住民票の写し等の交付 3)戸籍の附表の写しの交付 4)納税証明書の交付 5)戸籍の届出 6)戸籍騰抄本等の交付 7)納税証明書の交付 8)外国人登録原票記載事項証明書等の交付 9)就学通知 10)埋葬・火葬許可 11)国民健康保険関係の届出書・申請書の受付と被保険者証等の交付 12)介護保険関係の届出書・申請書の受付と被保険者証等の交付 13)国民年金被保険者の届の受付 14)妊娠届の受付と母子手帳の交付 15)飼い犬の登録 16)狂犬病予防注射済証の交付 17)児童手当の請求書・届出書の受付 18)精神障害者保健福祉手帳の交付 19)身体障害者手帳の交付 20)療育手帳の交付 21)自動車臨時運行許可
 以上のほか、法律に基かない、印鑑登録、印鑑登録証明書の交付、住居表示証明書の交付についても住民基本台帳事務に準じる

*留意事項
1)
市町村の適切な管理の確保(具体的には民間事業者が業務をおこなう官署内に市町村職員が常駐し、不測の事態等に対しては直接、適切な対応をおこなうこと等)
2)
市町村長の判断行為、原簿管理等は市町村職員が自ら責任をもって実施すること
3)
労働者派遣法を守ること
4)
個人情報保護の配慮(個人情報保護条例での規定、実施要領の作成、業務内容に限定した端末へのアクセス制限など)

3)住民基本台帳ネットワークシステムを民間事業者に取扱わせてはならない。

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2.「公共サービス改革」の名による強引な民間委託の拡大
 昨年末の「公共サービス改革基本方針(改定)」の閣議決定に先立って、官民競争入札等監理委員会(事務局は内閣府)は、民間委託が可能な窓口業務の拡大を強引に進めてきました。市場化テスト法の立法過程で窓口業務の対象を「受付」と「引渡し」に限定されたことに不満を募らせ、対象範囲の拡大を関係省庁へ「一次検討要請」し、昨年8月には市区町村の行政改革担当課に直接、市区町村から拡大を要請させるよう誘導するアンケート調査を実施したうえで「二次検討要請」を行うなど、「民間委託推進」しか眼中にない乱暴な対応を重ねてきました。その結果、法律改正によらないで、「解釈」の変更により対象範囲を拡大させたものです。

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3.世論と運動が、委託拡大を規制する「留保事項」をつけさせる
 民間委託可能の業務を拡大するにあたって、政府(内閣府および関係府省)は、市区町村による適切な管理の確保、労働者派遣法の遵守、個人情報保護のための具体的措置等を留保事項として明記せざるを得ませんでした。このこと自体、これまで自治労連が職場を基礎に取り組んできた住民票の閲覧規制、国民・住民とともに取り組んできた住基ネット差止訴訟、全労連や民間労組と取り組んできた偽装請負・違法派遣の一掃などの運動を反映したものです。

 しかし留保事項の具体的内容は「例示」であり、法令の遵守を担当する国の責任を放棄して、民間委託の実施も、また民間委託に不可欠な「適切な管理」も、結局のところすべて市区町村の責任に転化しています。偽装請負などの犯罪行為が摘発されても、「実施した市区町村の責任」と言い逃れるような仕組みになっています。

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4.問題だらけの「新基準」
1)窓口業務に求められる公務性、専門性、総合性を無視
 新基準では、民間事業者が市町村から受託して取扱える窓口業務の根拠を、「事実上の行為又は補助的業務」に求めています。しかし窓口業務の多くは、あらかじめ「手順書(マニュアル)」さえ作成すれば、民間事業者が市区町村職員から個々の指示を受けずに業務を遂行できるという決め付けは、「民間委託の拡大」を最優先させた机上の空論です。「手順書(マニュアル)」どおりに遂行できる業務でないことは、現場をみれば明らかなことです。窓口業務は、「はじめに」で指摘したように、「全体の奉仕者」としての職員の公務性、専門性、総合性が確保されているからこそ、住民は市区町村の窓口に信頼を寄せ、必要な行政サービスを確保できるのではないでしょうか。

2)「労働者派遣法」「職業安定法」に違反する事態も
(1)
民間委託は、請負契約と労働者派遣契約の2つの類型によって行われることは周知のことです。個人情報保護など市区町村による適切な管理が強く求められる窓口業務は、民間事業者に広範な裁量権がある「請負契約」にはなじみません。新基準での留保事項に「民間事業者が業務をおこなう官署内に市町村職員が常駐し、不測の事態等に対しては直接、適切な対応をおこなうこと」を明記していることが何よりの証明です。請負契約の場合、市区町村職員が民間事業者の労働者に直接、指揮監督してはならないだけでなく、民間事業者が業務に必要な施設・備品を確保することが求められます(職業安定法施行規則第4条)。したがって請負契約と留意事項でいう「適切な管理の確保」とは、両立できません。

(2)
市区町村の窓口業務は、「労働者派遣契約」にもなじみません。なぜならば窓口業務は一時的・臨時的な業務ではないからです。労働者派遣法によると、政令で定める26業種以外は、労組の意見聴取を前提としても最長3年間の導入に限定されていること、期間を超えると派遣労働者への雇用契約申し込み義務が市区町村に発生します。ところが、地方公務員法による任用規定によって派遣労働者を正規職員で雇用することは困難です。市区町村は労働者派遣法を破るのか、それとも地方公務員法の任用規定を破るのか、どちらかを選択しない限り、派遣労働者を導入できません。このことについて、自治労連は昨年9月の総務省との交渉でも指摘し、担当者は回答できませんでした。

3)「行政の一貫性」が保たれていない説明
(1)
市場化テスト法第34条「特定公共サービス」に基づく場合は、引き続き「受付」と「引渡し」に限定していること、新基準で拡大した、法律によらずに「事実上の行為」として市町村長の判断で(議会手続き等も要らない)民間委託する場合は、住民基本台帳の端末操作まで可能だとしていることとの間に、行政の一貫性が確保されていません。このことについて、新基準では、市場化テストの場合は「官署内に市町村職員が常駐しない事例も想定した」からであると言い訳しています。しかし事実と異なります。市場化テスト法が審議された参議院行革特別委員会(2006522日)では、荒木慶司・総務大臣官房総括審議官(当時)が、中馬弘毅行革担当大臣(当時)や竹中平蔵総務大臣(同)の出席のもとで「請求の受付とか引渡しは、事実行為であって、台帳との照合、確認、審査などは引き続き地方公共団体の職員が行う」と明快に答弁しています。事実を捏造してまで言い逃れようとする内閣府や総務省等の姿勢は許されません。

(2)
留保事項で明言している「住民基本台帳ネットワークシステムは民間事業者の取扱いはできない」ことと、新基準で拡大した民間可能業務の範囲に「住民基本台帳業務(端末による入力操作を含む)」をあげていることとの間に、行政の一貫性が確保されていません。住民異動届の受理と記載(端末による入力を含む)、戸籍の届出の受理と記載なども「事実上の行為又は補助的業務」としながら、住基ネットについては業務全体を範囲外としています。おそらくこの「基準」を作成した担当者が、住基ネット差止訴訟によって現在、全国16の裁判所で、総務省が被告又はそれに順ずる席に座らされていること、住基ネットの場合、自治事務といいながら地方自治体だけでなく政府府省ともネットワークを構築して、事実上、国家による国民統治の根幹に据えており、今後さらに社会保障番号や納税者番号とのリンクなどを構想している頭に浮かべたものと思われます。しかし、このようなご都合主義的な行政が、「公共サービス改革」の名のもとに行われてよいのでしょうか。

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5.今後の取り組み
1)政府(内閣府及び総務省などの担当府省)に対する立場と運動
(1)
政府とくに内閣府公共サービス推進室に対しては、国民・住民の基本的人権を守り、住民福祉の増進を図る責務を持つ地方自治体において、「民間委託」さえ進めばよいとする行政を「公共サービスの改革」の名において行っていることに強く抗議します。

(2)
政府とくに総務省(住民基本台帳業務等)、法務省(戸籍業務、外国人登録業務等)、厚生労働省(国民健康保険業務、障害者手帳交付業務等)、文部科学省(就学通知業務)などに対しては、憲法及び個別法を遵守し、財界・大企業や、「市場原理主義」に陥っている一部自治体関係者の言い分にひきづられて、国民の基本的人権を犠牲にすることがないように求めます。

2)地方自治体に対する立場と運動
(1)
政府と財界・大企業による窓口業務の委託範囲の拡大に対して、国民世論と運動によって「留保事項」という歯止めをかけさせていることをふまえ、地方自治体が「請負契約」にせよ「労働者派遣契約」にせよ、窓口業務を民間委託しないことを求めます。

(2)
現に窓口業務を民間委託している自治体にあっては、「請負契約」にせよ「労働者派遣契約」にせよ、偽装請負・違法派遣である恐れが濃厚であることをふまえ、民間事業者の従業員の雇用と労働条件を守るために、労働者派遣法に基づいて、地方労働局への告発を含む必要な措置を講じながら、市区町村の直接雇用職員に切り替えることを求めます。

3)自治労連の取り組み
(1)
「婚姻届も民間委託OK」(24日付、読売新聞)などの報道にみられるように、今回の政府の措置が、窓口業務の民間委託を安易に拡大される契機になる恐れが濃厚です。しかも「行革」推進勢力は、従来から「窓口業務が全面的に民間委託できれば、総務・財務・企画などの内部事務もすべて民間委託が可能になる」と窓口の「規制緩和」を繰り返し求めてきました。市場化テスト法第34条「特定公共サービス」の第一号が住民基本台帳業務であったことは、このことを示しています。したがって、窓口業務の民間委託問題を自治体業務全体のアウトソーシングに道を開く重大な局面としてとらえ、情勢学習、国と自治体当局への要求、住民対話と宣伝を強化します。

(2)
「見解と運動(案)」をもとに、当面、窓口職場(住民基本台帳や戸籍等の職場はもちろん、税務証明、国民健康保険、老人医療、介護保険、国民年金、障害者手帳、児童手当、就学通知など)での職場学習会、職場討議、職場要求・決議に取り組みます。そのための職場討議資料の作成を検討します。

(3)
内閣府、総務省等との交渉・懇談を行います。

4)「見解と運動」の取扱い
「見解と運動」を自治労連全体のものにし、たたかいをすすめるなかで、必要な補強をおこなうものとします。

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by jcpkasiba | 2014-04-02 20:15 | Comments(0)
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